お互いの田んぼを協力し合って田植えをしていたな・・・私が子供だった頃

東北の小さな盆地にある 小さな村

何軒かの集まりがあったのだろうと思う

田植えと秋の刈り入れの時期には  協力し合って作業をしていた

その季節ごとの作業が済むと  大人達は酒の席を設け  語り合い  笑い合う

そんな集まりのある夜は

大抵 朝に告げられた  

子供達にとっても いきなり飛び込んでくる夜遊び可能の日

これが とても楽しかったな~

近所の遊び仲間だし いつも遊んでいるメンバーではあるけれど

夜に遊べるなんて しかも たくさんの料理を食べて 大人の時間まで起きていられるなんて

最高に楽しい出来事の筆頭に上げられた

それを告げられた日は学校へ行っても  夜の事を話してみたり  ソワソワして落ち着かなくて

何をしていても 繰り返し 思い出しては ワクワクしていた

ひとつ年下の ひろちゃん と呼んでる男の子がいた

ひろちゃん は ようこちゃん の弟で とても優しい子だった

私と なぜかウマが合う子だったな・・・

放課後になると ひろちゃんが私を待っていて(姉のようこちゃんではなく)

ふたりは ふざけっこしながら一緒に帰り  カバンを放り投げたら すでに 夜遊びモード

大人達の作業は 暗くなるまで続き 一足先に帰って来る母親達が 宴会の準備を始めるまで

かなりのテンションまで 登りつめて遊んでいたのに疲れを知らない子供だった

ある日 そんな宴会があった夜 ひろちゃんとふたりで 誰もいない自宅へ戻り

見たかったTV番組を 一緒に見た 『金メダルへのターン』

ひろちゃん はその番組を知らなかったから 見たかったのは私だったようだ

私が 懐中電灯を握り締め ひろちゃんと手をつなぎ

宴会場から 12~13分ほど離れた家まで 真っ暗な道をトコトコ歩いた

田んぼでは カエルが ゲコゲコ うるさく泣きわめき

夜空の星は吸い込まれそうなほどに輝き・・・

川のそばの柳の木がゆれると 飛び上がる程 怖かったけど 

私はひろちゃんよりもひとつお姉さんだから 怖がっていないフリをして歩いた

無理に楽しい会話を作って ひろちゃんも同じように怖がっていないふりしてるなって感じていたけど お互い それは言わない 暗黙の決め事

走り出さないように・・・でも次第に早や歩きは加速していったっけ・・・

他の子供達は皆 親のいる場所から離れないのに、私達は ふたりで冒険したのだ

30分の番組を見終えて、大人達の宴会が続いている場所へ帰ると

誰も私達がどこへ行っていたのかなんて 知らなくて 自分達のほうから 言いふらし そこでまたふたりの連帯感は強まった

あるおばさんが 私の事をほめて「しっかりしてるね~」って言ってくれたから 

ますます得意になったっけ・・・

遠い 遠い ほんとに遠い昔の事だから

もう誰も 覚えていないだろうけど いつか ひろちゃん に もう一度会う事があったら

あの夜の事を覚えているか 訪ねてみようかな?

私が小学校4年 ひろちゃんは 3年生   春のことだったと思う・・・